そのオトコ、要注意。
歓喜と転落
午後の部の公演もなんとか終わり、いよいよ残すところは後夜祭での成績発表のみとなった。今は私含め、実行委員が中心になって急いで特設会場やらキャンプファイヤーやらを準備中なわけなのだが。…奴め、逃げたか?
何故かさっきから有栖川ルイの姿が見当たらない。この猫の手すら借りたい大変な時に、なんてヤツだ。
もう知らんと、配置図に目を落としたとき。
「#★%£@※〜ッ!?」
ふーっ、と耳元で息がかかり、声にならない声を上げ飛びのく。
「なぁーに、暗くなってんのよ、ひ・め・さ・ま」
「か、加奈子…」
「何よ、その目は」
片耳を押さえながらジトッと彼女を睨むと、事もなげにケラケラと笑うもんだから、なんだか怒るのを通り越して呆れてしまう。…まぁ、いつものことだ。
加奈子はあのぶっ飛んだ白雪姫を作り出した、脚本係。彼女の陰謀…いや、機知に富んだシナリオのお陰で、あの最後の某シーンが生まれたのだが。今となっては、それがあの数の観客を本当に呼び寄せたものだから、恐ろしい。よく堪えたな、あたし…ははは。
「なに一人で笑ってんの?」
「いや…。ちょっと自分にエールを……」
「ふーん。…まあいいけど」
「………」
おいおい…。
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