そのオトコ、要注意。


時間差がある分、余計に羞恥心も増す。
またあの悪夢がフラッシュバックしてくるのを必死で掻き消した。


落ち着け、あたし!
えーと、こんなときは…?

そうっ!


「あ…あのことは忘れて?」

ニコッと若干引き攣りながらもお願いしてみた。


「…なんで」


…は?

「なんでもなにも、こっちが早く忘れたいからに決まってんでしょが!」

あなたにはデリカシーなるものがないんですか!?
と、あたしの辞書にデリカシーなんて横文字がすんなり出てきたことに感謝しつつ、問いただす。


「…道を尋ねようと思った人に対して、あまりにお粗末な英語か日本語かもわからない言葉で言い逃げする奴に、デリカシーがどうとか問われるなんて心外だな」

顔色を一切変えず、「だからなに?」とまで言い出しそうな目の前の彼。


ほ、本人の口から聞くと、なんて爆弾…!


…ていうか、『お粗末』って。
いくらハーフでも、女の子達がキャーキャー騒いじゃうような容姿でも。

……、聞き捨てならない。


.
< 33 / 142 >

この作品をシェア

pagetop