そのオトコ、要注意。


着いた先は人気の少ない渡り廊下。

そこまで来ると環奈はクルッと振り返り、

「さぁさ。オネーサンに話すこと、あるんじゃない?」

ズイッと身を乗り出して聞いてくる。


「……なんの話?」

とぼけてるあたし。
もちろん内心びくびくだ。

それに対しフフッと不敵に微笑む環奈、もとい小悪魔。

「昨日あたしが美羽にいくら電話しても繋がらなかったの。あの、あんたが。で、あの後有栖川くんと何かあった、…って考えるのが普通じゃない?」


あたしの焦った表情を見て確信を得たのか、ニヤリと笑い

「やっぱり。さらっと吐いたほうが身の為よー?」

なんて、悪魔の如く囁いてくる。

吐かなかったら何させる気だぁー…!

「え、エヘッ?見逃して?」

「あら。そんなかわいこぶりっ子はあたしには通用しないわよー」

だーよーねー。
あたしも環奈がそんなんで引くとは思ってないけど!

……でも。
あんなことがあったなんて……言えないよ。

押し問答を繰り返し、それでもなかなか話そうとしないあたしについに環奈が折れた。

「そんなに嫌ならしょうがないか……」

その言葉にあたしはホッと――

「じゃあー、有栖川くんに聞いちゃおっかな!」


………。おいッ!

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