そのオトコ、要注意。


「ちょ!なんでそーなるッ!」

あいつから直接だなんて…。
余計な事吹き込まれても困るっ!


「だってー。美羽が話したくないんなら仕方ないじゃない?」

んじゃ、早速行ってくるわね、と意気揚々とこの場を去ろうとしている環奈に慌てて待ったをかける。

頭を傾け、こちらを窺う視線からは若干の期待が覗いている。
それでも躊躇って唸るあたしに焦れたように環奈が引き返してきた。


「あーもう。手のかかる子ねぇ」

ま、そこがカワイイんだけど、とあたしを覗き込むは優しい瞳。

その双眸にどうしようもなく安心して。
胸のつかえがとれていく気がして。
あたしを後押しする。


「……ス、された」


俯き加減でポツリと囁いたあたしの声は、環奈には届かなかったようで。

あたしは顔を赤らめながらもう一度言う。
今度ははっきりと。


「――だから。キス、された、の」


最後のほうは消えるような声になってしまったかもしれない。

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