そのオトコ、要注意。
「それにしても。彼って『王子』っていうより『狼』ってカンジ?」
やってくれんじゃない、とか言う環奈はどこか面白そう。
あー…。
悪い顔だぁ…。
思慮を巡らす彼女がこんな表情をしてるときは、だいたいとんでもないことを考えている。
あたしには未知数なことばかりなのだけれども。
「あたし、先戻るー」
悪人面している環奈を尻目に、あたしは疲れたような呆れたような気持ちのまま校舎内に入って行った。
「あっ!ちょっと美羽ー?待ってよ〜。まだ聞いてないことたくさんあるってばー」
環奈も小走りでついて行った。
教室に近づくにつれてなんだかやけに騒がしいと思ったら、よく見ると女子が圧倒的に多い。
「どーせまた有栖川くんの野次馬に決まってんでしょ。全く…迷惑な話よ」
いつの間にか隣にいたらしい悪女、じゃなくて環奈がそう漏らす。
「こんなに?!これ、すごい人いるよ?」
「昨日の今日だもの。口コミが広がった、ってとこじゃない?」
じゃー、またあの状態?
あたしたちは女子の波を掻き分けながら教室へ。
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