そのオトコ、要注意。


凍結するあたしを余所に、環奈は動じなかったみたいで。

「おはよー、有栖川くん。あたしの名前、覚えてくれてたんだ」

奴にも負けない微笑みをのせて話す環奈に、一瞬面食らったような有栖川ルイだけど。

「西森さんぐらいの美人を知らないヤツなんていないんじゃない?」

昨日も男子達が興奮気味に教えてくれてね、と話す。
っていうか、昨日ちゃんと男子と交流もててたんだ。
女子の相手ばっかだと思ってたけど。

「あら。あたしもあなたのこと聞いたのよ」


キツネ王子と悪女の腹の探り合いが行われているとは露知らず。

あたしはそれまで有栖川ルイに群がっていた女子が気になった。

女子達は環奈に『敵わない』と思ったのか、そそくさと後退。


「笹原さん」

いつのまにか話を終わらせた奴が呼びかけるもんだからビクッと反応する。

「は、はいッ?」

「昨日、ありがとう。助かった」

昨日とは違うキラキラした笑顔。

「べ、別にお礼なんて…」

――ほとんど同時だったと思う。



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