そのオトコ、要注意。


「ほらー、席着けお前らー。俺が大変だろうが」


みんなはそれに総ツッコミ。

「仕事しろよ給料ドロボウ」
「怠けんなー」

爆笑と共に騒がしくなる。
環奈はすでにすがやんに向き直って笑っている。


…そんな中。
あたしは一人、耳まで真っ赤にして俯いてた。


『キスもごちそーサマ』

耳元であんなこと囁かれたお陰で――

でも誰にも気付かれなかったみたい。



結局、そのまま隣を見る事が出来ないまま、午後のHRの時間になった。

議題は約2週間後の土日に行われる学園祭について。

ほんとはHRなんて今は考えられる心境じゃなかったけど、すがやんに「笹原ぁー、寝てんじゃねー」と目敏く見つかりしぶしぶ参加。


「じゃー、まずはクラスの代表者である実行委員を決める」

すがやんの言葉に教室内がざわめく。

フツーやりたくないよね、こんな面倒なこと。

みんながお互いに擦り合い戦を勃発しようと囁きあっていたら。

「じゃ、俺、やろうかな」
隣から声が上がる。

「おっ。なんだ有栖川、やってくれるのか」

「早くクラスにも馴染みたいですし」

出た。
瞬殺王子スマイル。

「んなら、女子は―――」
瞬間、教室内が沸いた。


.
< 54 / 142 >

この作品をシェア

pagetop