そのオトコ、要注意。


――かかった。
有栖川マジックに。
女子も男子も。

この完璧な微笑みの前に抗えるはずもなく、みんな口々に賛成の意を表し始めた。

「有栖川がそう言うなら…なぁ」

「そ、そうよね?」

「いいんじゃないか?」

「公平だしねっ」


おいおい。
いくらなんでもおかしいでしょ〜。


「…男子と女子、それぞれに人気のある人になりそうね」

ポツリと呟く。


……環奈の言う通りだ。

冷静になればわかることも、あの微笑みの前では熱を上げるらしい。


チラと有栖川ルイを伺ってみると、そんなあたしに気づいたみたいで――フッ、とあたしにだけわかるように一瞬だけ笑った。


同時にゾワッと言いようのない寒気があたしを襲う。

うわ…確信犯だ、あいつ!
なんつーヤツなの…。


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