そのオトコ、要注意。


環奈にまで手伝ってもらって、奇声も交えながらも二人がかりで漸く採寸が終了。
授業が始まるので今はみんな片付けに入っている。


「あー、しんどかった…。それで一体何なのよ、『覚悟』とやらは」

さっき有耶無耶にしてしまった話を再度尋ねる。

ああ、と言って環奈が採寸の為に脱いだカーディガンを羽織りながら答えた。

「あたしは『これから大変になるんじゃない?』って意味で言っただけよ」

「へー…って。ますます意味不明なんですけど」

まぁそうよね、って苦笑された。

「いろいろな意味でね。例えば、アレ」

そう言って環奈が指したのは教室を出ようとしている有栖川ルイの姿。

?マークが浮かぶあたしの顔。


「まぁ、見てなさいって」

有栖川ルイが教室を出てすぐに、廊下が黄色い声で溢れた。

群がる女の子に笑顔であしらっていく有栖川ルイ。


初日みたいに無視はしないんだ…。


「つまるところ、女のやっかみの対象ってことよ」

あんたがね、って指差された。


えっ、なんで?

声に出さない疑問を鋭く察知した親友が呆れたため息を一つ。


……ちょっと。


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