そのオトコ、要注意。


「うっせーぞ。誰だよ、全く…」

ガラッと扉から踏み込んで来たのは担任のすがやん。


ヤバッ、予鈴鳴ってたんだ…


そそくさと席に戻る途中に、後ろから「バカ美羽」って環奈に小さく小突かれた。

「や…だってさ」

考えてもみてよ。
そりゃあ、大きな声だって出るよ!
何だってそんなに飛躍するの!
あたしが有栖川ルイの『特別』?
そんなわけあるかっ!

だいたいあたしはまだ例の件を許したわけじゃない。

あれはあんまりにも驚いたから思考が鈍ってただけ。

きっと、そう。
絶対そう――だ!…って。はれ?


「いない…」

「さっきの笹原か。ったく、廊下に駄々漏れだったぞ」

ウッ!な、なんであたしって…

あたしが驚いたのがわかったのか「周り見たらわかんだろー」と呆れられた。


…顔という顔がこっちを向いていた。

さすがに恥ずかしくてあたしは俯いたけど、すがやんの次の言葉で恥じらいなんてぶっ飛んだ。

「王子が休みでショックなのはわかるけどな」

…え?

キョトンとしてしまった。


「なんだ、知らなかったか。てっきり本人が言ってんのかと…。有栖川は今日からしばらく欠席になる」


は!?

.
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