そのオトコ、要注意。


その目にすがやんが応える。

「有栖川がお前に、って預かった」

渡された台本には、びっしりと引かれた線と、埋め尽くされた言葉。

これ…。
演じるときの細かい動きとかのあれだよね…?
すっごい書き込まれてるし。


あたしが目を丸くしてると。
コイツも、と数枚の紙を渡された。


さっきと同じ線の細い整った字。
あたしが何をすべきか、逐一指示が書いてある。


「それ見てやれ、だと。なかなかできた奴だな、お前の王子は」

すがやんはこう言って豪快に笑いつつ、からかってたけど。

あたしは否定するのも忘れて、しばらく俯いたまま動けなかった。


「…笹原?」

さすがに反応も何もなかったあたしを不思議に思ったのか、拍子抜けしたような声でやっと気がついたのと同時。

あたしは「失礼します!」と叫ぶ勢いで、頭なんて下げたんだかどうなんだか、そのまま職員室を飛び出した。


冊子と数枚のプリントを胸に抱えて。


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