そのオトコ、要注意。
どのくらい走っただろう――。
加速してた足はだんだんと遅くなり、止まったのは西棟階段の踊り場。
西棟は各教室が並ぶ東棟と違い、お昼時なのもあって人が見当たらない。
誰に見られるわけでもなく、そのままへたりとしゃがみ込み腕の中の台本たちを見つめる。
「――もう」
なんだってそんな。
なんでこんな面倒臭いこと、やってんの。
だったら、あたし一人に任せるより自分でやったほうが絶対速いし正確なくせに。
だいたい、昨日までピンピンしてた男がこんなにも突然欠席って、絶対不自然。
クラスのみんなは体調不良だと思い込んでるみたいだけど。
……ていうか、こんなとこしゃがみ込んで何やってんだ、自分。
俯きながら一人自嘲的な笑みを浮かべていたら。
「――君、大丈夫?」
「え…」
あたし…?
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