そのオトコ、要注意。

そんな常人ではない美貌を兼ね備えた謎の男が振り向く。

「ところで。――…コイツは君のじゃなくて?」

?、と思って視線が捕らえた先に握られたあるもの。


それは紛れも無く、あの例の台本だった。

どうやってこの人の手に渡ったかなんてどうでもよかった。

あたしはただ衝動的に、目の前にぶら下げられた台本を掴もうとする。
しかしそれに感づいた男が先に一歩身を引いたことにより、遠退けられた。

「……っ」

顔を歪ませるあたしに、尚も嫌な笑みを貼付けて、涼しそうに佇むその姿に、無性に腹が立った。


「…返して欲しい?これ」

ただの台本かなんかでしょ、とそれを丸めてパコッと掌を叩く。

普段ならなんでもない、気にも留めないその行為に、何故か今は怒りを助長させるだけで。
何かが堰を切るように溢れ出すのを止められなかった。

「……っ、ただのじゃない。それはアイツが――…!」

そこまでしてはっと我に返る。

な、に今の。
また、やっちゃった…?

待っていたのは痛い程の沈黙。

どうして自分はこうなのだと、性懲りもなく後悔ばかり重ねてしまう馬鹿なあたし。



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