そのオトコ、要注意。
扉を開けるも保健室には誰も居なかった。
有栖川ルイはそのまま部屋を横切り、奥のベッドにあたしを座らせた。
「どうも…」
姫抱っこは不本意だったけど、ここまで運んで来てくれたのは事実だ。
先程は余裕がなさそうな表情をしていたが、よく見ると若干怒っているようにも見えて。
やっぱり重かったかな…、と不安になる。
「ごめん…、ね」
カチャカチャと何やら探している後ろ姿に、そう小さく呟く。
「なにが」
聞こえないように言ったつもりが、ちゃんと聞き取ったらしい。
あたしに背を向けたまま、少しぶっきらぼうな声色にさらに不安がよぎる。
「え。だって…。なんだかんだ言っても迷惑かけちゃったし…」
ここまで連れてきてくれたし…。
そこまで言い終わると、気まずくて俯く。
どうやら作業が終わったらしく、ガラス戸を閉めてから有栖川ルイがあたしに近づくのがわかった。
.