そのオトコ、要注意。


いつまで経ってもこない衝撃と温かい床におかしいと思って、うっすらと目を開けて見ると。


「…あっ、ぶねぇ……」

目の前には有栖川ルイの胸元。

案の定、下敷きにしてしまっていた。


「ごっ…ごめッ」

全体重を預けてしまって、また重たい思いをさせてしまった。

(どうしてあたしってばこうなの!)

しかも最悪なことに、痛みが疼いて立ち上がれない。


「なにやってんだよ」

呆れながらも小さい子にするように抱き上げ、再びベッド上に座らせてくれる有栖川ルイ。

「ごめ、ん…なさい」

迷惑かけてばかりの状況にさらに落ち込む。

そんなあたしに短くため息をつくと。

「ほら。まだ全部終わってねーから」

あたしは黙って従った。


ヒンヤリとした湿布を貼られ、包帯を巻かれる。


「…なに、お前自分が重いって気にしてんの」

白い帯で足が覆われていく途中、そんなことを問われた。

「…しかも。それで俺が怒ってる、そう思ってるわけだ」

アホかお前、そう言われちょっとムッとする。


.
< 88 / 142 >

この作品をシェア

pagetop