そのオトコ、要注意。


「…そりゃ。だって重いし……」

ほんとにごめんなさい、と俯いたまま謝ると、また前方から深いため息。

「…別に。ただ、俺は女の一人も支えられねぇなんて、男としてどうかと思うけどな」

それに、と付け加える。

「お前、そんな重くない。逆にちゃんと食ってんのか、って感じ」

それは家でのあたしを見てないからだよ。

「え…。あたし色気より食い気だよ…」

そう思わず漏らすと、薄く笑われた。


「さて、と。あとは本職に任せてそろそろ行くか」

「ごめんね。いろいろ…」

しゅんとして謝ると、不意にデコピンが飛んできた。

「いたッ!」

「バーカ。そういうときは…」

ありがとうだろ。


突然顔が至近距離に迫り、耳元でそう囁かれる。

まるで恋人たちが囁く甘い言葉のようなそれに、背中に何かが駆け巡り、耳を押さえて身を離す。


「あ…あり、がと…う」

しどろもどろにそう口にする。
顔なんて見れない。


今、絶対おかしい、あたし…。



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