そのオトコ、要注意。

扉まで行ったところで、有栖川ルイがはたと立ち止まる。

「…もし、」

もし?

「学園祭までに治んなかったら、」

「……?」

「舞台中ずっと、白雪姫は王子にお姫様抱っこ、だからな」

そうにんまり笑みを浮かべる姿は、そう、まさしく悪魔だ。

王子様なんかじゃ絶対ない。


「なっ!?最悪ッ!」

あたしが嫌なのわかってるくせに。

さっきまではあたしを助けてくれたミカエルだったのに!

安定値まで持ち直しかけていた株は一気に大暴落。

さっきのはやっぱからかわれたんだ…!
そんなにあたしをおちょくって楽しいんか!

…はい、そーいうヤツでしたね、アナタは!

歯を食いしばって地団駄を踏む。
実際は踏めないけど。


身悶えているあたしに一笑し、有栖川ルイはそっとその場を離れた。


「あながち冗談でもねーけどな」

前方を見据え廊下を歩く彼がそうこぼすも、あたしに届くはずもなかった。


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