そのオトコ、要注意。
chapter3
それぞれの思惑
人もまばらな放課後。
人気のない場所に彼女らはいた。
「ほんと…どういうつもりなのかしら、あの女。いい加減目障りだわ!」
整った顔立ちを歪ませて放つ言葉には怒りが満ち溢れていた。
そんな彼女に気圧され、堪らず別の声が言う。
「でもあんなのは物珍しいだけで…っ」
「そうそう!興味本位ってだけかもしれないですし…」
「彼も本気じゃないですって…!」
取り繕うように言うが、彼女の内から出る黒いモノを収めることは出来なかった。
それどころか。
「本気だなんて。あってたまるものですか」
ピシャリと放たれた冷気を含んだ言葉に3人はもう何も言えない。
「笹原美羽…。許さないんだから」
脳裏に浮かぶのは先日の光景。
公衆の面前で抱えられて保健室に向かった笹原美羽。
その仲睦まじい姿に嫉妬でおかしくなりそうだったことを思い出す。
「あの方の隣にいるべきはあんな女じゃないの。あたしこそ、眉目麗しいあのお方に相応しい、…違う?」
必死に首を横に振る彼女の連れ。
それに満足げに笑う。
「なら、早速本題に入りましょうか……」
小さな笑い声は夕闇に不気味に響いた。
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