そのオトコ、要注意。

あ〜…もうっ!
なんでこんなことにっ!


「さーさーはーらーみーう〜っ!待ちなさい!」

「問い詰めてやるんだから!」

「この卑怯者〜ッ!」


あたしは朝から追われていた。
それも不特定多数の女子に。

足を庇いつつ必死に逃げはしたものの、あたしはあっという間に囲まれてしまった。


こちとら手負いだっつの!

(あ、足負いか)

なんて呑気なこと、この状況でそんなこと言えたもんじゃないけど。


「何の用でしょうか」

できるだけ笑顔を保って聞いてみる。

「あんた、馬鹿にしてんのッ?」

「ホント何様のつもり?」

屋上に出ようとした目前で女の子3人組に追いつかれて。
今はあまり人目のつきにくいところにいる。
だからなのか、3人組は勢いづいて一方的にまくし立ててきた。

微妙によろしくないこの状況。
今は口だけだから聞き流せるけども、手が出てきたらあたしの足じゃ避けようがない。

こんなことなら、屋上に逃げようなんて考えなきゃよかった。

「ちょっと!聞いてんの!?人の話」

…聞いてないです。

「黙ってないで、なんとか言いなさいよッ」

だんまりも許してはくれないみたい。

「あのー。つまるところ、用件は…」

できるだけ神経を逆撫でしないように言ったつもりなのに、ギロッと細目で見られる。

いや、だから、用件を…ね。


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