そのオトコ、要注意。


――覚悟は出来ていた。

ものの数秒後、頬を叩かれ…


「何やってるの?」

…て?

聞き覚えがあるような気がした。

つむっていた目をそっと開け、彼女たちの後ろを覗き込むとヒョロリと背の高い男が立っていた。

見覚えのあるその男の登場に、あたしよりも彼女たちのほうが驚いているみたいだった。
というよりも、何かうろたえている風にも見えた。

そう、あれはいつかの階段先での…『台本ドロボウ男』だ!


「ふ、藤代先輩…?」

「えっ!藤代先輩!?って、あの藤代先輩なの!?」

「きゃー!ホンモノじゃん!」

今まさにあたしに平手打ちしようとしてた彼女が、彼女たちが一瞬にして女に変わった。


(やっぱり先輩だったか…)

ていうか、そんなに有名人だったんだ…


「なーんか。オモシロそーなことしてんじゃない、彼女たち。俺も混ぜてよ」


…は、へ?


.
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