そのオトコ、要注意。


藤代先輩と呼ばれたその男は、彼女たちとあたしを見回し恐ろしいことを言い放った。


「ふーん。なーんだ。てっきりその子を血祭りに上げてるんだと思ったのに」


な、なんてことを!
血祭り!?

(まぁ、あながちハズレでもないのが悲しいけど…)


彼女たちをチラと見遣ると、その目の見開かれていたこと。
完全にあたしへの敵意なんて削がれている感じがした。

ご愁傷様。


「血祭りだなんて…、そんな物騒なこと…。じゃ、私たちはこれで…」

行くわよ…!と小さな声で平手女が囁くと、オロオロと3人が後に続いて行った。


姿が見えなくなると、あたしは壁に背を預けへなへなと座り込んだ。

どうやら結構ビビっていたらしい。
身体は正直だ。


はあ、と溜息混じりに彼女たちが去って行った方向を見据えると、クスッという笑い声。


…忘れてた。まだ居るんだった、ここに。


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