未来日記に憧れて
プロローグ
「あーあ、どこかにステキな人いないかなぁ」
服の通販サイトを見ながらつぶやいた。
私は青山 香奈。社会人2年目のOL、24歳。
地元の付属高校から大学に進み、小さな会社だけど就職もできた。今の暮らしに不満はないけれど、会社はオジサンばっかりだし、同期もほとんどが女の子。ステキな恋愛だけが欠けている。
今日だって金曜の夜だっていうのに、飲み会がないから早めに帰宅してネットしてるわけで。

カチ、カチ……

マウスをクリックする音だけが虚しく響く。

「ん?『運命の出逢いがここに』」
ふと1つの広告に目が止まる。
いつもの占いサイトだとわかっていても、何か惹かれるものがあり面白半分でクリックしてみる。
「運命の相手とドラマティックな恋愛、あなただけのラブストーリーがここに。……なんだこれ?」

それは登録している見知らぬ男女が、サイトから送られてくる未来が書かれた日記の通りに行動しながら出会い、イベントなどを通して恋愛に発展するのを応援するというものだった。

「なんだか未来日記みたい」
未来日記とは10年くらい前に流行ったテレビの企画で、見知らぬ男女がスタッフから手渡された日記の通りに行動し、その中で本当に恋愛感情が生まれるのかというものだ。
当時中学生だった私は、その恋愛模様やドラマみたいなシチュエーションに憧れて、毎週欠かさず番組を見ていた。

「怪しいけど、大丈夫なのかな?」
一抹の不安を抱えつつも、興味には勝てず
「登録するだけならいっか」
試しに登録してみることにした。

「ふむふむ。まずは名前と住所ね。そして休みの日。これは土日、っと。そして理想のタイプ?うーん……身長は173cm以上で、上限はナシ。体型は……太ってる人はイヤだな。年齢は年上がいいから25歳~、35歳を超えちゃうとちょっとキビシいから、34歳まで、と。性格は、やさしくて、真面目で、判断力がある。こんなもんかな」
全てを確認し、登録ボタンを押す。
「『登録完了しました。あとはメールが届くのをお待ち下さい』っと。ナルホドね。ホントにメールなんて届くのかしら?」
まだ半信半疑のままパソコンの電源を切り、ベッドに入る。
「運命の恋、か……」
そのままゆっくりと眠りに落ちていった。
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