未来日記に憧れて
全然集中できなったはずなのに、クライマックスのシーンでは感動して涙がこぼれた。さすが世界中で大ヒット中のハリウッド大作。
スクリーンのカーテンが閉まり、終了のアナウンスと共に照明がゆっくり明るくなる。
「大丈夫?」
マスカラが落ちないように涙を拭う私を心配そうに守さんが覗き込む。
「はい、多分。マスカラが落ちてなければ」
そう言った瞬間、守さんは吹き出しながら
「大丈夫だよ。香奈ちゃんはどんな姿でもカワイイから」
と軽く言った。
「もー、そんなに笑わないで下さいよ」
「ゴメンゴメン。じゃあお手洗い寄ってく?」
「はい。お願いします」
お手洗いから出ると出口付近で守さんが待っていてくれた。
「お待たせしました」
「いーえ。じゃあ、行こうか」
「え?次はどこへ行くんですか?」
「夕飯を食べにあそこの最上階へ」
守さんが指差したのはオシャレなホテルの最上階にあるレストランだった。
「えっ!?あそこ?あっ、だからこの格好……」
「そーゆーこと」
守さんは軽くウインクしながらイタズラっぽく笑う。
「エスコートしますよ、お姫様」
そう言ってドアを開け、軽くお辞儀をしながら私を通してくれる。
「お姫様ってガラじゃないですって」
笑いあう二人の間には穏やかな空気が流れていた。

レストランに着く頃、またメールが届く。
「あ。ちょっと待って下さい」
『<未来日記>私達は見晴らしのいい席で食事をしながら、お互いの恋愛について語りあった』
「ここでの話題は恋愛の話ですって」
「そうなんだ。じゃあ行こう」
「はい」
案内されるがままに通された席は一番奥にある見晴らしのいい場所だった。
「うわぁ、ステキ……」
下に広がる夜景の海に思わず声を上げてしまう。
「イルミネーションとか好き?」
「大好きです!クリスマスとかに作られたイルミネーションも好きですけど、やっぱりこういう自然にできた夜景の方が好きかな。だから夜の高速道路とか大好きなんですよ」
一人テンションの高い私を守さんは優しい眼差しで見つめてくれていた。
その後、守さんチョイスのおいしいお酒と料理が次々と運ばれてくる中、私達は日記の通り、お互いの恋愛について話した。
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