未来日記に憧れて
「前の彼女とはいつ頃別れたんですか?」
「うーん……大体1年くらい前かなぁ」
「それ以降今まで新しい出逢いとかってなかったんですか?守さん、ステキだからすごくモテると思うんですよ」
「ハハ、そんな事ないよ。それにしばらくは恋愛する気持ちになれなかったんだ……」
少し陰りのある表情で切なく笑う守さん。嫌でも何かがあった事が伝わってくる。
「何か……あったんですか?」
恐る恐る聞いてみると、少しため息をついてからゆっくりと話し始めてくれた。
「実は……前の彼女に二股かけられてたんだ。5年も付き合っててさ、あのまま結婚するものだと思ってた。だけど、俺が名古屋に出張の時、たまたま早く切り上げられたから予定よりも1日帰ったんだ。そしてたら彼女、俺の部屋で別のヤツと・・・」
落ち着いた声のトーン。だけどその中にもひしひしと伝わってくる苦しさ。
そんな守さんを見ているだけで胸が締め付けられる想いがした。
「今でも部屋の鍵、開ける時さ、ふとあの時の事がよぎって、ちょっと怖いんだ。バカみたいだろ」
自虐的に笑う守さんが切なくて、悲しくて
「私なら……私なら守るさんにそんな想いはさせません」
自然と言葉が飛び出していた。
自分でもはっとして顔をあげると、守さんと目が合う。
「優しいんだね。ありがとう」
いつもの守さんの温かな微笑があった。その表情に私もホッとする。
「ゴメンね、こんな暗い話しちゃって。やめたやめた!過去の話は終わりにして、そうだな、香奈ちゃんは彼氏ができたらどんな所にデートに行きたい?」
「ん~……デート……やっぱりディズニーランドかな」
「好きなの?」
「もちろん!今も友達と行くけど周りがカップルだらけだと気が引けちゃって」
「そうだよねー。クリスマスとかバレンタインのカップルシーズンはもうそれオンリーって感じだもんね」
「そうなんですよ~」
守さんと話してるとやっぱり楽しい。相変わらず時間が過ぎるのはあっという間だった。
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