未来日記に憧れて
「ごちそうさまでした。でもホントにいいんですか?ご馳走になっちゃって……」
「大丈夫だよ。こう見えてもそれなりに稼いでますから!」
そう言っておどけながらガッツポーズを見せる守さん。
「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます」
食事が終わって店を出る頃、また私のケータイにメールが届く。
『<未来日記> 駅までの帰り道、私達は初めて手をつないだ』
「この日記って……」
戸惑っていると
「どれ?」
守さんは私のケータイを覗き込んだ。
自分の顔が少し赤いのがわかる。お酒のせいか、それとも日記を読んで緊張しているのか。
「じゃあ、ハイっ!」
そう言って差し出された大きな手。
「えっ、でも……」
私が躊躇していると
「日記の内容には必ず従わなきゃダメなんじゃなかったっけ?」
「うっ……そう、でした」
「だから、ほら」
守さんは笑顔で手を差し出す。
私もゆっくり手をのばし、その手に自分の手を重ねた。
「じゃ、行こっか」
ゆっくりと歩き出す。
恥ずかしさで私は守さんの目を見ることができなかった。
「そんなに緊張しなくても平気だよ。別に取って食ったりしないから」
ゴーカイに笑い飛ばしてくれる。いつも優しくて繊細な感じかと思ってたけど、こんな一面もあるんだ。
「しっかし手、ちっちゃいねー」
大きな手にすっぽりと包まれ、その温かさをいつまでも感じていたいと思った。

しばらく歩くと駅が見えてくる。
「あーあ。もう着いちゃった」
イタズラっぽく笑う守さん。
「そうですね」
「ホームまで送るよ」
「えっ、ココで大丈夫ですよ」
「だって、もうちょっと手、つないでたいじゃん」
なんて返したらいいかわからず、無言で頷いた。
そうこうしていると電車がやってくる。
「じゃあ、また、来週」
「はい。楽しみにしてます」
手を振るとドアが閉まりゆっくりと電車が動き出す。彼が見えなくなるまで手を振った。
その手には、まだ彼のぬくもりが残ってる気がした。
今日の映画のように、私達もハッピーエンドを迎えられるのかな?
< 9 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop