夢列車
「梨花さん、顔が真っ赤になって、見るからに発火中」

「これは重症ね」

2人は顔を見合せている。

もっとも、私は頭の中をぐるぐると駆け回る翔の顔に翻弄されていたが。

「しっかし、梨花がここまではまるって、どんな人?」

茜の言葉に詠美が頷く。

「たぶん、王子様系じゃないかな? 梨花さん、気が強いから包容してくれる人に弱そう」

的確な推理だよ、詠美!

確かに弱いよ! 翔はそっち系だよ!

この幼馴染みコンビ怖いよ。

茜が情報を聞き出し、詠美が推理する。

もう、探偵にでもなって、事件解決してて。

ジッチャンの名に賭けて、謎を全て解いてちょうだい。

いや、問題はそこじゃなあい。

本題は、2人の言う通り、私が翔を好きなのかどうか、だ。

だって会ったばかりの人間。不良から助けられたとか、車にひかれかけたのを救われたとか、そういうイベントはなかった。

ただわずかな時間話しただけ。お互い名前以外ほとんど知らない状況だ。

それではまるで、私は翔の容姿が好きみたいに――。

いやいや! まだ決まってないからね! 別に私が翔のことす、す、すぅ……。
「いい加減に面白い百面相ね」

「はぅっ!」

しまった! 茜が楽しそうだ! ネタを提供してしまったらしい!

「ただ、1つ面白くないことがあるわ」

「……?」

急に茜の声が真面目なテンションになる。

さっきまでの笑顔が消えて、私まで気が引き締まった。

茜は、真剣な表情で、重く口を開く。

「どうして、そんなに私たちにも隠そうとするの?」

「……!」

私は、ハッとする。

茜はそのまま続けた。
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