夢列車
「全く……さっきからなにをそんなに考えてるのかと思えば……」

茜はぶつぶつと小声で呟き続ける。

口を尖らす様がなかなか可愛い。

茜は拗ねたときの顔が可愛いという私からしたら非常に羨ましい属性持ちだった。

はぁ〜、と深くため息をつき、茜は私を指差す。

「つまり、あんたがその男の人――え〜〜と……?」
「翔」

「その翔のことが本当に好きか分かれば良いんでしょ?」

「うん、まぁ……」

ひどくざっくりした理解だが、大筋間違ってはいない。

否定をするどころか、むしろ、そんな方法があるならぜひ聞いてみたかった。

「なら、話は簡単じゃない」

自信満々の茜。また対して起伏のない胸を反らせた。

「それは?」

私はズイッと身を乗り出す。

茜は人差し指を立てた。

「それは――」

一拍。

「直接デートでもして知り合えば良い」

………………………………。

コイツハナニヲイッテルンダ?

「茜ちゃん?」

「なに?」

詠美がそ〜〜っと茜に話しかけた。

「えっと……忘れてるかもしれないけど、梨花さんは相手の方の名前しか分からないんだけど……」

「それがどうしたの。問題なし」

いや、問題あるわ。

詠美も同じ考えのようだ。表情に驚愕と呆れが混在していた。

「そんな顔しない。あんたたちは考えすぎなだけ」

どこまでも自信満々な茜。

「梨花の問題は、梨花が相手を知ることでしか解決できないんだから」

「そう、だけど……」

私は語尾を濁した。

一面的には正しいのだ。

手段がないだけで……。

「うだうだと考えすぎない! 無理でもなんでも、他に手がないなら、それを実現することだけを考えなさい!」
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