夢列車
稲妻が走った。

茜の言葉は耳から入り、脳を焼き付くし、全身を痺れさせる。

私は感動したのだ。

茜の言葉は極端ではある。人によっては考えなしと言うだろう。

だがそれがどうした?

どんなに正確だろうが予想は現実じゃない。

どんなに正しかろうが理論は真実には届かない。

茜はそれを知っていたのだろう。本能で理解したのかもしれないが……。

真理だ。

そうとしか言いようがない。

どれほど考えても答えがでないなら。

何も考えないことが一番正しいのではないだろうか。

どれほど迷っても道が見えないなら。

とりあえず前に一歩踏み出すべきだ。

私は茜を見つめる。

茜の瞳に映る少女は、感激にうち震え、潤んだ目を輝かせていた。

「茜の……、茜の言う通り!」

私は知らないうちに握り拳を作っていた。

そんな様を見て、茜は呆れたような、それでいて安堵したような声音で、

「そう、良かった」

と言った。

そして、コーヒーカップを手に取り、口許に近づけながら確認をする。

「これで悩み解決ね?」

そう問いかけ、カップを傾けた。

だから、私は感謝と尊敬の念をこめてはっきりと答える。

「ううん、まだ悩んでる!」

『なにぃいいいいいいいい!』

茜と詠美が叫んだ。

力一杯叫んだせいか、直後にテーブルに肘をついて脱力する。

詠美にいたっては頭を抱えるていう動作付き。

私はあまりに大きかった二人の叫び声が恥ずかしく、ちらりと周囲を見回した。

何事かといった風に、ひどく迷惑そうに他のお客さんが視線を注ぐ。

うう、すいません……。

目を逸らして私は心の中で小さく謝った。
< 30 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop