夢列車
「えっと……梨花さん?」
あ……。

し、しぃまったぁああああああ!

もしかして、いやもしかしなくても……。

「と、とんで……た?」

「ええ、二秒ほど」

クハッ!

またやってしまった……。

今の私って端から見たら……。

無茶苦茶怪しいのでは? ぶっちゃけ挙動不審?

ぁ……。

自覚したら凹む。

「梨花さん?」

「いや何でもないから!」

駄目だ! これ以上呆けていると本格的に変な人に思われる!

何か! 何か話さないと!
「あっ、翔は大学院生なんだよね。今夏休み?」

わぁあ! 私の馬鹿! 他になかったの?

よりによって!

「はい。まあ、僕のと言うより、教授の、なんですがね。なんでも家族旅行に行くそうなので、それに便乗して僕もお休みです」

そう言って、いたずらっ子のように翔は屈託なく笑った。

その可愛い笑顔で、私は落ち着くことができた。

ただ、格好良いだけでなく、こんな愛らしい一面もあったのだ。

「じゃあ、今回は旅行ですか?」

「ええ。……?」

翔が不思議そうな顔をした。

私は今は普通に話せているはずなのだが。

今までの奇行を記憶の彼方に追いやり、私は翔に、
「あの、どうかしましたか?」

「え?」

そこで初めて、翔は今の自分の表情を自覚したらしい。

少しためらったが、私に思ったことを話してくれた。

「ひょっとして、この話題嫌いなんですか?」

「え?」

ポカンとしてしまった。

翔がどうして、そんな風に考えたのか分からない。

つまらなさそうな顔をしてしまっていただろうか?

でも、翔と話すことは楽しいのだ。思ってもいないことが顔に出るはずがないのに。

ああ、だからって翔にそんなこと分かるはずがないし……。

考えてることが全部伝わったら、私は恥ずかしくて死ぬ。

だから私は直接聞いてみることにした。

「なんで、そんな風に思うんですか?」

翔は、恐る恐る答えた。

「それは――」
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