私の愛する憂鬱
「そっか、ありがと。」
それだけ言うと、彼女たちはぞろぞろと私の席を離れていった。
「やっぱりただの幼なじみなんだよ」
さっきまで私の机に群がっていた女の子の中の一人が嘲るようにそう呟いたけど、聞こえないふりをした。
「愛子には悪いけどあたし、夏目悠が嫌いだよ。」
派手な彼女たちを感情の隠らない目で見ながら親友の絵美が言った。
今にも煙草に火をつけて、けだるそうに煙を吐きそうな、そんな目つきで。(もちろん例え話だけど)
「私も嫌いですけど?」
「知ってる。でも、あんたとあたしの嫌いは違うよ。あたしは夏目悠が心の底から嫌い」
絵美は悠のことを絶対にフルネームで呼ぶ。それにどんな意味が込められているかはわからないけれど、そんな所が彼女らしいと思った。