私の愛する憂鬱
「ありがとう」
「は?」
私がそう言うと、絵美は心底不機嫌な顔をした。
美人の不機嫌な顔は割と迫力があって怖い。
どうやら彼女にとって、私の発した感謝の言葉が腑に落ちないらしい。
「悠を嫌う人ってあんまりいないからさ、なんかざまあみろって感じ?」
「あんた、変だよ」
フッと笑って絵美は教室から出ていった。
私はその微笑みの美麗さに驚きながらも、鞄を手に教室を後にした。
教室を出るときにまた女の子たちの話し声が聞こえたけど、内容が届かないように足早に去った。
悠ファンのひそひそ話なんて、ただのBGMにすぎない。
ひょっとして、悠と関わる限り一生まとわりつく私のBGMなのかもしれない。