童貞狂時代
そこでは昼休み、学校や会社と同じで飯を食ったり、遊んだりする時間があった。まあしかしやはりそんな特殊な場所ゆえ昼休み時間自体が猛烈に長い。普通の学校だったら40分が関の山だ。しかしその精神科デイケアでは一時間半は昼休みなのだ…。学生時代から対人恐怖症で休み時間の喧騒をいつもひとりでぽつんと苦痛を感じていた僕には一時間半もの休み時間を筋金入りのジャンキー達と過ごすのは苦行以外の何物でもなかった。 いつもジャンキーの目を気にし、なるたけ目立たないように隅っこで文庫を読んだりしていた。 しかしある日心配していた出来事が僕に起こった。まだ入ったばかりの十九歳の新米ジャンキー高井が、戸田となにやら僕のほうを見ながら2人でひそひそ話している。 ある瞬間、その新米ジャンキーが僕に指をさし、「あいつまじうぜーなんかスゲームカツクんだけど」とあからさまに聞こえるように言った。僕はそう言われたとき頭が真っ白になった。 5分くらいしばらく文庫を読む振りを必死でした。そして看護婦に今日は調子悪いから…と言って早退した。看護婦は笑顔で理由を聴きもせずに快諾だった。
 
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