童貞狂時代
新宿から自宅の中井までの道がひどく迂遠にかんじられた。西武新宿線で一本なのに…。 次の朝普段ならデイケアなのに僕は自宅でPS2のサッカーゲームをしていた。母親が「行かないの?」と言ってきたから、うんとだけ答えた。デイケアから電話がかかってくる。母親がとると僕に替われとのことだ。出ると、昨日早退許可を下した看護婦が、「何故デイケアにこないのですか?」と極めて事務的ではあるが棘のある声色で言ってきた。僕は「調子が悪いんです」とだけ言って電話を切った。以来新宿の精神科デイケアには一度も行くことはなかった。
 正直行き始めたころは同じような心の病の女性と知り合いになり人生初めて彼女ができるのではないかと期待していたことは確かだった。僕にすけべ心があった。だから自分が欲をかきすぎたせいだといいきかせた飛び出しそうな発狂童貞心に対して。彼女どころか友達も出来ず、中学二年生のころにいじめられていたトラウマが僕の心のなかで再燃しただけであった…。
彼女いない歴=20年と6ヶ月、自己記録をまた更新した。まだ大丈夫どこかからきこえてきたそんな囁きが脳髄に染みた・・。彼女いない歴=20年と6ヶ月、自己記録をまた更新した。まだ大丈夫どこかからきこえてきたそんな囁きが脳髄に染みた・・。
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