実らない片想い
~紗々の恋と友情~
早く…早く学校から出たい…。
――ガラッ
「紗々ちゃん!」
後ろから美羽に呼び止められる。
このまま、聞こえなかったふりをして、さっきのように立ち去れば良いのかもしれない…。
だけど…一瞬ギュッと唇を噛み締めた後、笑顔で振り向く。
『…上矢くんと付き合い始めたんでしょ?』
「紗々ちゃん…私…」
ギュッと手を握り締めて、声を震わせている美羽。
『なんで、そんな顔してんの?良かったね!』
また強がって思っても無い事を言った……。
「ごめんね…」
『…なんで謝るの?…あたし帰るね!』
もう笑顔を作るのは限界だった…。
それに…今にも美羽に感情をぶつけてしまいそうで……。
そのまま前を向くと、早足でその場を後にした……。