君が笑うなら
「…なぁ」
「あ?」
「お前さ…もしかして
あの子のこと好きなのか?」
「…だったらなんだよ」
「…あの子、誰だ?」
「…槙原直樹の彼女」
「……」
沈黙が続く。
「…奪っちまえよ」
その沈黙を破ったのは、
早瀬の方だった。
「そーもいかねーよ」
「んでだよ…
槙原直樹って、
お前に付きまとってた奴だろ」
「…あぁ」
「…なんで奪わない?
意識不明なんだろ」
「奪うとか…
そうゆうのじゃねーんだ」
わかってたこと。
初めから気付いてたこと。
「あいつは、
俺を好きにはならない」
さっき、声を荒らげたとき
とても…
怯えた目をしていた。
殴って、
怒鳴って、
傷つけて。
こんな世界…
似合わないんだ。
相原舞にも、槙原直樹にも。
住んでる世界が違うんだ。
わかってたはずなのに、
口に出した瞬間、
また胸が裂けるように痛い。
なんだよ、俺。
一人前に寂しい、なんて
思ってんじゃねーよ。