君が笑うなら
「…しんどいな、お前も」
「ほっとけよ」
早瀬が煙草に火をつける。
「そういえばさ」
街はもう真っ暗だ。
相原舞は
無事に家に着いたのだろうか。
「事故の前、
俺んとこにも来たよ、槙原」
俺が聞き流していても構わず喋り続ける早瀬から、
知らなかった事実が告げられた。
「お前とは手を切ってくれ、
お前を普通の生活に戻してくれー、なんて土下座までしてさ」
「土下座…?」
「あいつ、俺がお前を不良にしたと思ってんだよ。
手切れ金持ってきたり、
自分のを切ってくれって
指を差し出したり…
俺をどんなヤクザだって思ってんだよっつーか」
「金はどうした」
「金ぇ?
ありがたく受け取ったよ。
あいつ、
これで解放してくれるんだな、
もう伸也は自由なんだななんて
目ぇ輝かせてさ。
俺が操ってたんじゃないのに、
マジでバカ――…」
「いくらだ」
「へ?」
「いくら受け取ったんだって
聞いてんだよ!」
また声を荒らげた。
「ちょ…怒鳴るなよ。
3万程度だよ…ちょっ」
早瀬が
声を震わせたのもわけない。
俺は常にポケットに忍ばせてあるナイフを奴に向け、
ぎらぎらした目で睨んだ。
「…3万出せ」
「脅す気かよ?」
「…脅しじゃない。
本気で殺せる」
「…お、おい…」
月明かりに、
対峙する2人が照らされた。