君が笑うなら

…――間もなく看護婦が到着し、
元気な姿の直樹を見て
とびあがって喜んだ。


その騒ぎに他の医師たちも来て、
病室は笑顔に包まれた。



俺はそっと病室を後にした。



病院のロビーでしばらく、
座って思い返していた。



『俺はなんだってやるよ。
君が笑うなら。』



…そういうもんなんだろうか。
相手が笑うだけで、
自分も報われるなんて……



そうこうしていると、
バタバタと慌ただしい足音が聞こえ、見覚えのある声がした。


「…あっ」



その瞳を見た瞬間、
心臓がボッと燃え上がる。


直樹へのうしろめたさや、
俺がこんなものを抱く罪悪感。



それはもちろんあったが、
それ以上に――…


…ただ、逢いたかった。

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