君が笑うなら


「…槙原直樹、どこだ」


受付の看護婦に尋ねる。
看護婦はあからさまに嫌な顔をして、答えた。


「312号室ですが、
今は意識不明ですので
お見舞いは今度にしていただいた方がいいかもしれません」


表なんかを見ないでさっと答えたところをみると、
何人もの人が槙原直樹を訪ねているのだろう。

そして、
意識不明と聞いて
諦めて出直すのだろう。



「……」


こっちは、
だから会いに来たんだ。


起きられてちゃ、
またやいやいうるさいからな。



俺は踵を返し、
312号室へと足を運んだ。


< 5 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop