Bremen
 
「確かにお前の言う通りだ。
楽機に人間では太刀打ちできない。
だったら……」

帽子から羽根飾りを抜き取り、それをペンのように持つバード。


「お前のような下郎に使うのは勿体ないが……
俺の切り札を見せてやる!」


そしてその羽根飾りで宙に何かの模様を描き出す。
盗賊の頭はその模様を見て思わず叫んだ。

「そ……
その模様はトオンの紋章!?
若造、まさか貴様……」


バードの前に描き出されたのは、我々の世界で楽譜の最初に記されている『ト音記号』だった。
しかしこのト音記号、音界スコアでは誰もが知っている重大な意味があった………

驚きを隠せない盗賊の頭の問い掛けに、ニヤリと不敵な笑みで返すバード。


トオンの紋章は輝きながらほつれ、一筋の光の矢となって天空に放たれる!
砂嵐に吹き飛ばされていた雲が矢の射られた方向へと急速に吸い寄せられて集まり、暗雲の渦が空を覆った。


バードは右腕を捲り、肘の辺りに隠されていたトオンの紋章を空に向けて呪文を叫ぶ。



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