Bremen
………カンツォーネという国は、ちょうど我々の世界で言う『西部劇の舞台』によく似た国である。
一獲千金を求めて開拓者が集うこの国は陽気で前向きな人々が多い反面、無法者も多いため治安が悪い。
バン!
「おい、姉ちゃん!
俺の音貨(おんか)が気に入らないだと!?」
「い、いえ……
ただ、お客様に出させて頂いたお食事の代音(だいおん)としては……」
「足らねぇっていうのか!」
スコアに存在する全ての国には『貨幣』が存在しない。
その代わりにあるのが『音貨』である。
スコアの住人は常に何かしらの楽器を所持しており、金を払う代わりに楽器を演奏して聴かせる。
その曲そのものを、形の無い貨幣であり、耳で聴取する金銭『音貨』と言う。
例えば飲食店で食事をした後、その食事に見合った演奏を店側に聴かせることで『代金を支払った』ことになるのだ。
逆に言えば、豪華な食事を食べた客の演奏が粗末なものだった場合、店側は『再演奏』を要求することができる。
食事に見合った演奏が聴かせられるまで、客は延々と演奏することとなってしまう。
「俺の演奏に文句があるってんだな!?
よぉし、外に出な!
お手本を見せてもらおうじゃねえか!」
「い、嫌っ!
やめ……
離して下さいっ!!」