Bremen
店の向かいの家はしっかりした木造作りの一階建てだった。
男が一人暮らしをするには十分過ぎる住居だ。
バードは玄関のドアノブを回してみる。
「鍵は掛かっていない。
不用心な男だな」
そのまま家の中へ。
昼間だというのに中は薄暗い。
バードが踏み入れた足によって埃が舞った様子から、ここしばらく男は外出していないことが容易に想像できた。
「ふにゃ〜〜。
汚い家なのニャ……
蜘蛛の巣が頭に引っ付いて気持ち悪いニャ」
「少し黙ってろ」
愚痴をこぼすソナを制し、用心深く奥へと進む。
そして玄関から真っ直ぐ進んだ先で、スネアだと思われる男が椅子に座っていた。
作業着を纏ったガッシリした体格の男で、年齢はバードより少し年上だと思われる。
「あんたがスネアか?」
おもむろにバードが尋ねると、男は俯いていた顔を上げ、
「ああ……そうだが。
あんたは誰だ?」
「旅の者だ。
向かいの店の主人に頼まれて、お前さんの様子を見に来た。
一体どうしたんだ?」
男は椅子に座ったままバードに告げた。
「幻聴に悩まされて不眠症になってしまった。
それが原因で働く気力も無い。
俺がどうなってしまったのか、俺が聞きたいぐらいだよ……」