Bremen
そして次の日……
ハイハットの朝は早い。
バード達の旅支度が終わる頃には工場が稼働を始めており、街の至る所から煙と油の臭いが漂っていた。
「じゃあみんな、気をつけて行くんだよ。
ソナちゃん、弁当は沢山作っておいたから安心しな」
「何から何まで済まない。
世話になったな、女将さん」
スネアが新調してもらった服は、真新しい紺色の作務衣(さむえ)だった。
バードとスネアは女主人に深々と一礼し、店を後にした。
「必ず帰って来るんだよぉ!」
女主人の声に、スネアは大きく手を振って答えた。
「さて、次の目的地だが……」
後ろから着いてくるソナをチラッと見るバード。
釣られてスネアも振り返る。
呑気に鼻歌を歌いながら、道端の花の匂いを嗅いでいる。
「ソナがどうかしたのか?」
「ああ。
お前には言ってなかったが、ソナはケットシー族の巫女なんだ。
あの娘……実際はソナに降りる精霊が、旅の行く先を示してくれるんだが……
まだその気配は無さそうだ」
「そうか。
じゃあしばらくは、行く宛の無い旅になるんだな」
「そうだな、託宣待ち……?
どうした、ソナ?」