Bremen
「おや………
あんた達、やたら早い帰りだったねぇ。
一体どうしたってんだい?」
女主人の店に到着したのは次の日の真夜中だった。
「女将さん、何度も押しかけて済まない。
しばらくソナを預かって欲しいんだ。
俺達は海を越えて、東の地に行かなくてはならなくなった。
その準備が整い次第、ソナを引き取りに来る」
事情を説明するバード。その横で、スネアは旅に疲れて背中で眠っているソナを店内の長椅子に寝かせた。
静かに寝息を立てているソナを見詰め、女主人は頷いた。
「分かったよ。
あんた達は安心して自分のやるべき事をしな。
ところでさ、さっき海を渡るって言ってたけど……
だったらさ。
良いものがあるよ」
音界スコアに存在する大陸=国には、それぞれ独自の文化が発展している。
その理由は、貿易や国交という文化交流の発達遅延にある。
大陸に済む者達は他の国に行かなくても不自由せず生活できるし、大陸同士が離れて過ぎているため戦争も起こらない。
『海を越える』リスクを払ってまで、他の大陸に攻め入ろうと考える者が居ないからだ。
それだけスコアの海を渡ることは、非常に覚悟の要ることなのである。