Bremen
 
「工場には予備の貯水プールがあるし、こいつは俺達の好きに使っても構わないだろう。
どうせもう、使い物にならないだろうしな。
……自分でやっておいて言うのも何だが」


スネアは両腰に手を当てて、山の頂に鎮座する貯水プールを見上げる。

「時間が惜しい。
スネアはすぐに設計と改修のプランに取り掛かってくれ。
プールは俺が、ストレグンで運搬する」

「ストレグンで?
しかしストレグンでは……」

「フッ、震の称号を持つ鳴流神を甘く見るなよ。
腕力で運ぶのは無理だが、魔奏力を使えば……運べる」


魔奏力(まそうりき)……
鳴流神には人知を超えた力、魔奏力が秘められている。
その力を引き出す鍵、それが奏者なのだ。
それぞれの鳴流神に与えられた称号こそが魔奏力のモチーフであり、魔奏力を引き出してこそ鳴流神は真の力を発揮できる。

分かりやすく言えば、奏者が鳴流神を通して使える魔法だ。



バードはストレグンを召喚し、プールの側に立った。
そして両掌を分厚い壁面に当てて、精神を集中する。

(魔奏力を使うのは、修行していた頃以来だな。
果たして上手く行くか……)


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