Bremen
スネアの叫びに一瞬ストレグンが振り返る。
『どんな奴だろうと、相手がシジマならば倒す。
……それだけだ』
「おい、バード!」
『………迎撃する』
スネアの制止しようとする声を振り切って、モビィディックを置いて行くようにストレグンは飛び去ってしまった。
まるで嵐の前兆。
黒雲は雷を走らせて豪雨を呼び、光を失った海面は墨汁の如き漆黒に染まっている。
(天候を操るシジマか?
……いや、どうでも良い。
さあ、出て来い!
今度こそ………)
突如、稲光が辺りを昼間のように照らした!
『上か!?』
ストレグンの注意が空に向けられた瞬間、足元の海面が突然盛り上がる!
隆起した海面を弾き飛ばして中から現れたのは、何十本もの軟体の触手だった!!
『何っ!!?
しまった、下か!?』
ストレグンを搦め捕る触手群の中心に、不気味に光る巨大な一つ目が。
『黄金の鳴流神よ……
ようこそ我が領域へ。
シジマ四門将メルシュと呑渦王レヴァテリトンが、貴公を黒海の深淵へと御案内しよう!』
『カラス野郎の次は、タコのバケモノか!
くそ、引き込まれる……!!』
捕縛されて身動きが取れないまま、ストレグンは海中へと飲み込まれて行った…………