Bremen
 
「いや、西側は既にシジマと結託しているものと思った方が良い。
仮に東側が俺達を受け入れなかった場合は………
姫を拉致し、人質にする」

「お前、マジか!?
姫を誘拐するなんて……
それに一国の主をそう簡単に連れ出せるものか!」

「あくまで最終手段だ。
使わなければ、それに越したことは無い。
………日が落ちたらすぐに上陸準備に入る。
モビィディックはこの場で潜水待機、ここからジョウルリまでは脱出用の小船を使おう」



やがて夜の帳が落ちる。
満天の星々が見守る中、沖から浜に向けて小船がゆっくりと進んで行く。
その狭い船内で、一人静かに物思いに耽るバード。


(ウズメ………
お前との再会の約束、こんな形で果たされることになるとはな。
これも俺達の運命か……)

波が浜で砕ける音が近付き、その音にバードはゆっくり目を開けた。
夜のジョウルリの町並みを煌々と彩る灯が、バードの瞳を朱に染め上げる。


「スネア、ソナ。
目指すはジョウルリ君主……
ウズメ姫の居城だ!」





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