Bremen
顔を守る頬当てによって表情は見えないが、ワオンという武者の瞳に怒りの炎が灯っているのが分かる。
「言い訳はしない。
お前の言う通り、何も言わずに俺がジョウルリを離れたのは事実だ。
だがな、今は油を売っている時間は無い。
いかにお前が相手でも、ここは押し通らせてもらう!
鳴流神でな!!」
「鳴流神だと!?」
羽根飾りで再び、素早くトオンの紋章を描くバード。
「汝、弦楽震ストレグン!!」
天空の召喚円から出現する、黄金のバイオリンを仰ぎ見るワオン。
「そうか………
バード、貴様も奏者として選ばれた者だったのか」
ストレグンの中に飛び込むバードの耳を、ワオンの呟きが掠める。
(貴様『も』、だと?)
そしてストレグンの中に入る瞬間、バードは見る。
ワオンが袖口から蒔絵の横笛を滑らせながら取り出すのを………
風切り音を鳴らしながら笛を回し、それを頭上に掲げるワオン。
続けて優雅に舞い踊るように、笛で大きく描き始めたのは………
(トオンの紋章!!
まさか、ワオンの奴………)