Bremen
 
顔を守る頬当てによって表情は見えないが、ワオンという武者の瞳に怒りの炎が灯っているのが分かる。


「言い訳はしない。
お前の言う通り、何も言わずに俺がジョウルリを離れたのは事実だ。
だがな、今は油を売っている時間は無い。
いかにお前が相手でも、ここは押し通らせてもらう!
鳴流神でな!!」


「鳴流神だと!?」

羽根飾りで再び、素早くトオンの紋章を描くバード。

「汝、弦楽震ストレグン!!」


天空の召喚円から出現する、黄金のバイオリンを仰ぎ見るワオン。

「そうか………
バード、貴様も奏者として選ばれた者だったのか」

ストレグンの中に飛び込むバードの耳を、ワオンの呟きが掠める。

(貴様『も』、だと?)

そしてストレグンの中に入る瞬間、バードは見る。
ワオンが袖口から蒔絵の横笛を滑らせながら取り出すのを………

風切り音を鳴らしながら笛を回し、それを頭上に掲げるワオン。
続けて優雅に舞い踊るように、笛で大きく描き始めたのは………


(トオンの紋章!!
まさか、ワオンの奴………)


< 80 / 107 >

この作品をシェア

pagetop