Bremen
「知人、ねぇ。
あの頃は師匠、師匠って可愛かったのにな」
『………握り潰そうか?』
バードの呟きを聞き、デヴァーシャの指が少し閉まる。
「お、おいバード!
あまり挑発するな!
俺達まで危なくなる」
「悪い、悪い。
久しぶりだからな、少し可愛い弟子をからかいたかっただけだ」
そう言うとバードは、デヴァーシャの掌の中でゴロンと横になった。
「虹の橋立に着いたら起こしてくれ」
(バードの奴……
この鳴流神の奏者のことを気に入ってたみたいだな。
鎧兜と頬当てで素顔は見えなかったが、一体どんな男なんだ?)
バードの寝顔とデヴァーシャの無表情な顔とを見比べながら、スネアは心の中で考えていた。
虹の橋立は、ジョウルリ君主の威厳と栄光を民衆に知らしめるために、過剰なまでに高く建てられた塔だ。
この塔を建造するために莫大な費用、年月、人材、そして死者を出したことだろう。
数十分の後、デヴァーシャは塔の中腹辺りにある発着用ポートに降り立った。
『着いたぞ。
私は姫をお迎えするため、最上階まで飛ぶ。
貴様らは近衛兵に着いて行き、謁見の間で待っていろ』
バード達を降ろすと、デヴァーシャは再び塔に沿って飛翔した。