KING CASTLE
「妃芽ちゃん、そんな怒んないでってー」
椿君は言葉とは裏腹に楽しそうだ。
それじゃあもっとやれって言ってるように聞こえるって。
「優ちゃんは普段もうちょい優しんだからね」
「それは表でしょ!」
「裏でも少しくらいは優しい時も時々稀にあるんだよー」
言葉が変だよ。
心の中で突っ込みを入れながら、椿君から伊吹に目線を移す。
憎らしい程整った顔。
やっぱりそう思う。
これに優しい時があるなんて、全く持ってあり得ないとも、思う。
「ゴチャゴチャうっせーぞ。早く来い」
眉間に皺をよせて冷たく睨みながら、伊吹は武道場に足を速めた。
長い足でさっさと歩かれたら、こっちはたまったもんじゃなくて。
早歩きどころか小走りになりながら進む。
「椿君はどこに優しさを感じたのさ」
「……あは」
笑って誤摩化す椿君を睨みつけた。