KING CASTLE




「あぁーん?俺らの支援費は上げれねぇだとぉ?」

横に広い、ごつい顔つきの男が凄んだ。

対する伊吹は、他生徒用のにこやかな笑みを浮かべている。


伊吹よりも背は小さいのに、横幅は広い。
老け方からして先輩だろうけど、頭悪そうに見えるな。

「うっわ、俺ああいう人無理〜」

騒がしい武道場の中で小さすぎる呟きに目を向けると、椿君は露骨に嫌そうな顔をしながら言っていた。

あぁ、隠せないタイプの人なんだ。


「そうですね。やはり美術部、吹奏楽部、野球部、バスケ部に支援費は多く割り当てられていますので」

「俺ら柔道部はこのままじゃ維持できねーんだよッ!」

いきなり大きな声を出すから、あたしも椿君もビクッと体を震わせてしまう。

「充分維持できる額だと思います。他校生の柔道部などは、学校支援費などないはずですよ、先輩」

それでも伊吹は全く動じた様子もなく、淡々と言い募った。
たしかにその通りだ。

だけどこんな交渉の仕方じゃ、この先輩が納得するはずないと思う。

伊吹にそれがわからないはずないけど。


どうするつもりよ。裏出せないくせに。


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